大江戸妖怪物語
「それにしてもひどい目にあったな。地図通りに来たのに崖って・・・」
「・・・神門」
「・・・なに?」
「もう、私たちは狙われているようだ」
「・・・どういうこと」
雪華は顔に手を当てた。
「山姥にだ」
雪華は僕たちが落ちてきた崖の上を見つめた。
「お前を引き上げようとしている時、背中を蹴とばされたのだ」
「えっ・・・?」
その場に沈黙が訪れる。
山姥が・・・僕たちを殺そうと・・・?
「せ、雪華・・・背中・・・」
「背中がどうした?」
「多分蹴られたときに、蹴った相手の靴の裏の跡が付いちゃってるよ」
「なんだと?」
雪華の背中には楕円形の土の汚れがついていた。僕はそれを払ったが、この前降った雨のせいもあってか湿り気が強く、完全には落ちなかった。
「帰ったら洗濯するか・・・。おのれ、山姥・・・」
「はぁ・・・それにしてもどうしようか。地図の道から外れちゃったし・・・」
「そうだな」
雪華は訝しげな顔をして地図を眺めた。
「まぁ、進むしかないだろう。地図がないし・・・」
少しばかり灰臭くなった僕らは、また歩き始めた。巨大蜂といい転落といい、やけに今日はついてない。
「どうする?こんなに歩いてたらまた野宿になるよ」
「野宿は・・・野宿だけは勘弁だ・・・」
雪華は溜息をついた。気づけば太陽は沈みかけ、東の空には星が見え始めていた。
「おい、雪華!家が、家がある」
「家・・・だと?」
僕が指差した先には、小屋のようなものがあった。僕はそれに駆け寄った。
「うんわあ~・・・。すんげえオンボロ・・・」
「廃屋のようだな」
板の壁を触ると、シロアリに食われたのか脆くも崩れた。
中に入ると、土間や居間など、なんとか一晩過ごせそうな感じだ。