大江戸妖怪物語
俊足を使い、中心部へ行くと・・・・・・、何かがおかしい気がした。
「雪華、この雰囲気・・・なにかおかしくない?」
村の人が、道を歩いている。しかし、その顔は虚ろで、心ここに非ずの状態だった。
「雀陽さま・・・雀陽さま・・・我が神、我が主君・・・・」
「雀陽さま・・・私を・・・私を・・・あなたさまの妻にしてください・・・・・・」
異様な雰囲気とは、雀陽を崇める人間しかそこにいなかったということだ。奇妙な宗教団体のように、雀陽さま雀陽さまと崇めている。
正直、気持ち悪い光景としか言えなかった。
そして、村人がバッと僕のほうに首を向けた。その目は浪々としておりながらも、明らかに僕のことを睨んでいる。
「あいつだ、あいつが雀陽さまを・・・」
「雀陽さまに危害を加えた・・・」
「殺すか」
「殺そう」
目の前に、鍬や鎌など、農作業に使う用具を手に持っている。しかし、どうやら今から農作業をしに行くのではなさそうだ。
・・・そう、どうやら僕らを殺すみたい。
村人がフラフラとやってきて、物凄い勢いで、鍬を振り下げてきた。ガキィン!と、咄嗟に炎刀で攻撃を受けた。
どこからかキャァッと叫び声が聞こえた。どうやら、まだ正常な村人もいるらしい。
しかし、その人たちを保護している暇なんてない。今、僕らのほうが危険なのだ。
「神門!大丈夫か!!」
気づいた。村人たちは、雪華を攻撃しない。僕だけを狙っている。
「・・・雀陽に言われてんのか!雪華は狙うなって・・・」
さすがに村人に危害を与えるわけにはいかないので、僕は太刀の柄の部分で腹を殴り、そのまま地面に投げた。砂埃が上がり、村人は気絶したように白目をひん剥いて仰向けで倒れた。
その時、首に傷がつけられているのを見た。
(これ、女将さんにもあったような・・・)
そんなことを考えていると、後ろから鎌が降り下げられていた。
「うわぁ!!」
今度は雪華がその攻撃を受け止めた。
「戦ってる途中にボォーッとするな」
雪華は村人の腹を思い切り蹴っ飛ばし、近くの家にぶち込んだ。