大江戸妖怪物語

雪華「江戸から、女が次々行方不明になっているらしいんだ」

神門「行方不明?」

不動岡「ああ。あまりまだ詳しい状況はわかっていないのだがな。とりあえず行方がわからなくなっている女が、現段階で判明しているだけで14人。これがそのいなくなった女どものリストだ」

そういって不動岡さんは僕に紙を渡してきた。そこにはいなくなったであろう女の顔と個人情報が載っていた。

不動岡「俺たちも初めは個々の行方不明事件だと思っていたのだが・・・詳しく調べると、この女どもには、ある一つの関連があった。この女どもは、とある陰間茶屋の常連だったんだ」

神門「陰間茶屋・・・」

名前は聞いたことがある。が、いったことはない。まあね。ホストクラブだもんね。

不動岡「その陰間茶屋の名前は、『月桂樹』といったかな。最近、路上での声掛けで問題になっていたんだが」

神門「月桂樹?もしかしてこれ・・・・・・」

僕は懐からティッシュを取り出した。そこには薄紫色の艶めかしい字で書かれた「月桂樹」の文字。

不動岡「そうだ。まったく・・・あいつらまた声掛けしてやがるのか・・・」

不動岡さんの眼から殺気がたち、僕の背筋が凍る。そして、雪華はティッシュに書かれている言葉を見た。

雪華「『月桂樹はあなたに最高の恋をお届けします。艶めいた夜、あなたをご招待。スタッフも募集中です』・・・って、最高にクソ気持ち悪いセリフが書かれているのだが」

不動岡「なに?スタッフ募集中?」

不動岡さんはその言葉を聞いて思いついたように黙り込んだ。そして僕と雪華をみて話し始めた。

不動岡「おい紅蓮神門。お前そこで働け」

神門「ハァッ!?!?!?嫌に決まってるじゃないですか!!!!」

とんでもない発案をした不動岡さんを目の前にしながらも、僕は全力で首を振った。

不動岡「もし寂しいなら雪華を連れていけばよい」

雪華「おい・・・なぜ私まで巻き込む。そもそも、なぜ潜入捜査のようなことをしなくてはならんのだ?」

不動岡「俺たちもできる限り操作はした。だがな、それも限界がある。特にこの月桂樹は情報管理には厳しく、全く情報が流れてこない。もう内部に入り込むしかない。・・・はやく解決すれば、閻魔王も喜ぶんじゃないのか?」

不動岡さんがニヤリと笑う。雪華も閻魔王という言葉に体をピクッとさせる。おいおい。、嘘だろ・・・・
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