大江戸妖怪物語
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神門「・・・暇だね」
黒龍「暇・・・」
外で雪華の帰りを待たされる男二人組。階段に横並びに座ったものの、黒龍は眠気に耐えられないらしく、こっくりこっくり頭を揺らす。
神門「こら、こんなところで寝ると風邪ひくから・・・」
黒龍「俺にとって椅子は睡眠器具・・・布団と同じ・・・」
神門「違うぞ、ここは椅子じゃない階段だ」
夢の世界に入りかける黒龍を僕は必死に止める。黒龍はうぅ・・・と喘ぎ声のような声を出しながらぐったりしていた。
??「おい黒葛原。閻魔王の部屋の前で寝るとはいい度胸だな」
階段の下から男の声が聞こえてきた。カツカツとブーツのヒールの音が階段を上がってくる気配がする。どこか聞き覚えのある声を持つ男は、黒龍が寝ている三段ほど下で立ち止ったものの、その高い身長から僕らを見下ろす目・・・。
神門「ふ、不動岡さん!?」
不動岡「・・・紅蓮神門か・・・。さっさとこの愚龍を起こしたらどうだ」
そこには江戸警察のトップ、不動岡星煉が右腕に書類を持ちながらも、その高圧的な二つの眼がそこにあった。しかし、江戸で見た時と服装は全く違い、荘厳な衣服を身に纏っていた。少し肌蹴た右の胸元には炎を象った刺青が見えた。
神門「なんでここにいるんですか!?」
雪華「閻魔王様のお部屋の前で騒ぐな。うるさい」
いつのまにか閻魔王の部屋から出てきた雪華が僕の頭を叩いてきた。
神門「いでっ・・・・だ、だって不動岡さんがなんでいるの?この人もこっちの人なの!?」
雪華「そうだ」
不動岡「あぁ、まだ言ってなかったか。俺は十王の一人、秦広王。この地獄で第一裁判官として勤めている」
突然の驚きの申告に僕は唖然とするしかなかった。
雪華「この人が江戸警察のトップにいてくれるおかげで、こちらとあちらの情報が交換できるのだ。ところで、先ほど閻魔王様から拝聴したことなのだが・・・次はその件なのか?」
不動岡「ああ。少し不可解なことが起きていてな。ぜひ調査をしてもらいたい」
どうやらこの二人の間で話されているのは共通の話題らしいが、その話題を知らない僕は蚊帳の外、といったところだろうか。
神門「え、えーっと・・・その・・・何の話?」
僕はやっとのことで口から疑問を呈した。