大江戸妖怪物語

もちろん、アホなことはわかっている。だが、それ以外に逃げる方法がなかった。

僕は砂糖の入った小皿を手に持つ。その時だった。

琉堂「・・・おっと」

琉堂が胸ポケットから取り出そうとしたペンが机の下へ転がる。そのペンは僕の足へポンっと当たり止まった。

琉堂「すまない、拾ってくれるか?」

琉堂に言われ、僕は砂糖の小皿を一旦置き、机の下に体を持っていく。そして頑張って腕を伸ばし、ペンを取る。

神門「はい、どうぞ」

琉堂「ありがとう」

そういって琉堂は酒をクイッと嗜む。

琉堂「・・・お前も飲め。砂糖たっぷり入れてな」

僕はそういわれ、小皿を手に持った。

神門(・・・・・・あれ?)

僕は首を傾げる。どうもさっきに比べると、砂糖の山の形が違う気がする。それに、砂糖ってこんなに粒子細かかったっけ?

目の前にあるのは、小麦粉並に粒子の細かいものだった。

神門(粉砂糖なのかな・・・?)

僕は視線を感じ、その方向を見てみると、琉堂が僕を注視してみている。ヤバい、早く飲めってことだよね!?

僕は慌ててその粉を飲み物に注ぐ。そしてマドラーでかき混ぜる。ゆっくり、ゆっくりと・・・。

これ飲んで吐瀉ったりしたら嫌だな・・・とか、そんなことを考えつつ。

琉堂「・・・まだ飲まないのか?」

琉堂のその一言で背筋がビクン!した僕は、慌ててグラスの淵に口をつけた。





?「・・・おい」

その一言で僕は振り返る。そこにはトレーを持った雪華。

雪華「すまん、客が多くてバックが回らぬ。・・・少しコイツ借りますね」

と、雪華は琉堂に言った。

僕は結局飲まなかったカルーアミルクを机に置いた。

神門「それじゃあ失礼します~・・・」

僕はそういうとキッチンの方へ向かった。



琉堂「・・・チッ」

琉堂が小さく洩らした舌打ちを、僕は知らない。


< 312 / 328 >

この作品をシェア

pagetop