大江戸妖怪物語

そして彼女の足元には薄く光る氷・・・。見事彼女はそれに足を滑らせた。そして彼女の持っていたグラスは綺麗な放物線を描き、琉堂のジャケットへ・・・・・・。

バシャァッと琉堂の胸に掛かった飲み物が地面へと滴り落ちる。

女「きゃあっ・・・!す、すみません・・・・・・!!」

琉堂「いえ、お気になさらず」

琉堂はビショビショのジャケットを脱いで無造作に近くの椅子の背もたれに掛けた。琉堂は下の服に水が浸みていないかを確認している。

僕はすかさず背もたれに掛けられた琉堂のジャケットの胸ポケットから鍵をそっと取り出すと忍び足でそそくさと雪華たちの元へと戻った。

黒龍「早く行ってきたほうがいい・・・バレるのは・・・時間の問題」

そう、これは時間との勝負だ。鍵を再度琉堂の胸ポケットに戻すのは99.9%不可能と考えてよい。ある意味捨て身と言える行為であった。

雪華「琉堂が気づきそうになったら、私たちが琉堂よりも早く向かい、扉を2回、2回で4回ノックする。そうしたら、すぐ出てこい」

わかった、と一言いい、僕はそっと会場から出た。
音をたてないように通路を駆ける。そして桂木の部屋に到達し、10個の鍵の中から適合する鍵を一つ一つ試す。7個目の鍵でようやく鍵が開き、僕は部屋に入った。
後手で鍵を中から施錠し、桂木の机の引き出しを開ける。

そこにはたくさんの書類、書類、書類の山。

ペラペラと流し読んでいると、顔写真が載った紙を見つけた。それは、女性客のものであった。

神門「顧客情報・・・かな?」

しかし、顔写真の上に「済」とハンコが押されたものとそうでないものがあった。
顔写真の右には、本人の身長、スリーサイズ、年齢が書かれており、そして「¥2,000,000-」と女性に描かれていた。

この女性が月桂樹に支払った金額かなとも思ったが、何か違和感を覚える。他の女性にも「¥1,500,000-」や「¥500,000-」など、金額がバラバラすぎる。そして、美人ほどそこに書いてある値段が跳ね上がっていた。一体これは・・・?

ずっと読んでいくと、男のページになった。男性客なんていたか・・・?などと思いながら見てみると、そこに載せられていたのは月桂樹で働くホスト達であった。しかし、桂木や琉堂の顔はない。ホスト全員が載っているわけではなく、2/3程度が載っていた。聡のページもあり、そこには「¥200,000-」と書かれた数字。こちらは売上ではなさそうだ。いったいこの数字は・・・?

再度、女性客のほうへ顔を戻すと、「済」のハンコを押された井埜の写真が出てきた。そしてその次のページには先ほど、井埜と共にいた女性客の写真があった。赤字で「緊急」と書かれている。さらに読んでいくと、さきほど馨さんがお持ち帰りをした女性の顔写真が現れた。そこには「済」と書かれた上から大きく×印が書かれていた。

とりあえず書いてあることを覚え、他の引き出しを漁る。出てくる書類の山を一枚一枚流し読んでいく。するとファイリングされた紙の束を発見した。「顧客リスト」と書かれたそれに顔写真はなかった。文字の羅列をひたすら読む。
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