初昼の儀式
 3つある椅子のうち2つは私が占領してしまっているので、優男は残りの1つに座り、自分の膝の上に荷物を置いた。私がもう一つの椅子を空けようとする動作を見せると、手でそれを制し、
 「大丈夫です。他に3つもあるのにここに来た私がわるいのですから。」と言う。
 私がわるいのですから、とは随分とまあ稀有な言い方をするやつよの、と感心しつつ、頭を巡らして見、他の3つが空だと初めて気づいた。

 「どうしてこちらへ?」
 「いえ、あとの3つは毛虫がすごくて。」

 ああ、と私は頷いた。いかにも虫の苦手そうな人相である。

 「髪、濡れてる。傘ささなかったんですか?」
 「ええ、雨が大好きだから。」
 「ああ、雨が好きなんですか。」
 「はい、大好き。貴女もこの雨平気なんですか?」
 「ええ、私は傘が苦手で。大風の時に骨の部分が帽子に当たって一回敗れちゃったことがあるんです。結構高い帽子だったのに、もったいない。」

 私の言葉に優男は小さく笑い、椅子ごと約2センチ分くらい移動してくる。おいおいこっちにずれてくるなよ













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