ビッグマンズ
   「ねえねえ、昔流行った『恋のバカンス』って誰の歌だか知ってる?」


 佐々川がまた、空気が読めない感じで邪魔しに来る。 この人は空気が読めないのか、読めない振りをしてるのか、どっちだろう。
 彼は今はもう、オーダーはやっていない。



 「ザ・ピーナッツです!」なんとか私が答えると、「よく知ってんじゃん!」と、満面の笑みで満足そうに去って行った。


 
 冷蔵庫から足りなかったトマトを持って戻ってくると、なぜか私の持ち場であるサラダ場に阿部がいて、私の仕事をしている。


 「どうしたんですか?」 私が訊くと、「私、帰っちゃおうかしら。」そう言ってうつむいた。


 
< 24 / 26 >

この作品をシェア

pagetop