ビッグマンズ

グッドモーニング

　一見簡単そうに見える、目立たない仕事ほど、本当は一番難しくて重要なことが多い。
　


　午前七時半。私達は毎朝の日課である休憩を、調理場の奥にある小部屋で楽しんでいた。
そこへ、ウエイターの声が聞こえる。「ルームサービス、ニューオーダーで、ワンのプレーンオムレツ入ります！」
　この日の朝のメンバーは、佐々川に阿部、そして私。阿部がタバコを吸いながら私に言う。「あんた、何やってんのよ！さっさと行きなさいよぉ！」
「なんでですか？！阿部さんのほうが、ベテランなんだから阿部さんがやればいいじゃないですか？！」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
「いやよ！アタシは今、タバコ吸ってんのよ！」
しばらく、やり合った末にしぶしぶ阿部が立ち上がり、「あんたって、本当、ヤな女ねぇ！」
そう言いながらストーブ前に向かう。





　佐々川は、こういう展開になると、いつも決まって聞こえないふりをした。
もちろん、佐々川にとってオムレツを巻くことくらい何でもない。でも、事故以来、彼は特別枠になっていた。