空耳此方-ソラミミコナタ-
――
未だに鼻をすする恵にまた一枚、ティッシュペーパーを差し出し、言乃はクスリと笑った。
「笑い事じゃないんだよ? もしかしたら死んでたかもしれないんだからね」
「はい」
「何でそこ嬉しそうに頷くの!?」
叱るように言っても、言乃はニコニコしていて、恵は諦めたように座る。
「まあまあ、落ち着いて恵。な?」
「炯斗には言われたくないし」
「んなッ!?」
恵は言乃の手をとり、もう何度目かになる言葉を言った。
「本当に……遅くなってごめんね? 私がもう少し早く行ってれば…」
「いいえ、十分助けてくれましたよ」
「ことのん……」
「恵ちゃん…」
感動の再会の再来。
ほんわかした友情オーラが部屋を埋めていく。
だが、それに包まれない人物が一人。
「なぁ、結局洞窟で何があったんだ?」
さっきまでは再会を祝福してたのに。
何処かムスッと炯斗は言った。
「もう…炯斗ムードぶち壊し」
「うるせぃ。俺だって再会の抱擁とかしたかったのに、胸に飛び込みたかったのに……」
「うわ、変態! 紛れて変なことするつもりだ!」
「誰がだ! つか何で普通にことのんと会話できてんだよ?」
二人は小机の上に広がる陣を見る。
「え、何、具体的には教えてくんないの!?」
言乃によるものだと教えて貰ったのは、大分後になってからだったらしい。