空耳此方-ソラミミコナタ-
言乃は、水差しから一口含み、喉を潤す。
この喉を通して他人に話をするなんて……後何回あるだろうか。
静かに、潤んだ唇を開いた。
「伝えた通り、私は克己さんについてきていた方に会いに行きました。
あてはありませんでしたが、なんとなく洞窟に足が向いたんです。
彼女は、そこにいました。暗号の前に立っていて……私はしばらく彼女を見つめてました。
魅入っていたと言った方が正しいかもしれません。
そして、話しかけようとしたその時………後ろからいきなり、首を締められたんです」
言乃は、小さく握った手に視線を下げた。
少し、震えている。
襲われたという驚愕
呼んでも聞こえない声
見つからなかったら?
このまま一人で死んでしまうのか?
恐怖 絶望が押し寄せると同時に堕ちていく世界
闇から引っ張り上げてくれた恵を見た時には、どんなに安心しただろう
目を覚ました時に、声を聞いてくれる炯斗を見た時には――
「じゃあ、やっぱりことのんも犯人を見てないのか…」
我に返って、小さく頷く。