空耳此方-ソラミミコナタ-

ハッとして恵は思い当たり、言乃に耳打ちする。

「ねぇ、もしかして克己さんの所にいた人って……?」

「ええ、彼女がそうです。名前を聞かせて頂けますか?」

『………アズサ…』


消え入りそうな声で言う。

炯斗は言乃をチラリと見た。
言乃の力を使えば隠された名前を明らかにすることができる。
しかし、言乃は小さく首を横に振った。


幽霊に対して『使役』することが出来る言乃の能力『言ノ葉』。

だが、無理やりに従わせるようなことを言乃が望む筈がない。


期待してた訳ではないので、炯斗は引きずることなく、アズサに目を変えた。


「アズサさん、か。どうしてここに?」

『……わからない。でも彼女について行けば、何かがある気がした』

そう言って、言乃を示す。

『そして来てみたら、貴方たちが私に気づいてくれた』

アズサの言葉は何処か淡々としていて、表情も変わりがない。

生前、一体何があったのだろうか。


< 200 / 374 >

この作品をシェア

pagetop