空耳此方-ソラミミコナタ-

炯斗が不機嫌な顔で引き下がると、突然場違いな虫が鳴いた。


ぐうぅぎゅるるぅう〜…

悲痛な鳴き声の主に呆れた視線が集まる。


「炯斗…」

「アハハ……朝っから何も食ってないんだよ…」

「それは私たちも――」


ぐきゅうぅ…

炯斗のよりは、いくらか可愛い虫がもう一匹。
言乃がそっと布団を顔まで引き上げ――

恵は、大げさにため息をついた。

「もう……二人とも…」

「でも、よく見ればもう夕方ですよ?」


その時、最後の虫が鳴いた。

「……」

「恵ちゃん?」

「……」


一人思いっきりうつむくが染まった耳が恵の顔色を顕著に表している。
ニンマリとした炯斗が恵を覗き込みながら立ち上がった。


「さて!じゃあ食堂に行くとしますか!」

「はい!」

『行って……らっしゃい…』

薄情にも、二人はそのまま部屋を出ていった。

行かないの?と言いたげなアズサと目が合うと、顔色の戻りきらない恵はざっと立ち上がり、口をへの字にしたまま二人を追って出て行った。


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