空耳此方-ソラミミコナタ-

一行は、山の入り口に辿り着いた。

「ここ?」

「いいや。まだ奥、だな」

山の入り口はご丁寧にハイキングコースの地図があり、少し向こうには『頂上行き』と描かれたロープウェイの駅があった。
谷の向こうまで繋がるロープウェイは駅が少し別になっている。島民たちも使うらしく、動いている。


「なんかさ、この島って田舎なのに突然こんなものがあって、何だか違和感があるんだよね」

「違和感?」

恵の言葉に、炯斗は振り返る。

「言われてみれば確かになぁ…花守荘もなんか現代的だし、ロープウェイなんかもあるし」

「島の人にとっては必要だから別に文句をつけるってことじゃないんだけど、なんかね」


フム、と少し立ち止まるが、今はそれよりも目の前に繋がる光の筋が気がかりだ。

「俺アレに乗る。まだ光は上に繋がってるんだ」

炯斗は一人で券売所に大股で歩いていく。
その背中を、慌てて追いかける。

小走りになりながら恵は言乃に囁いた。

「何か炯斗おかしくない?」

【怖いんでしょうか?】

「怖い?」

言乃は炯斗の背中を見つめて眉をひそめた。

【その力をつかって初めて見つけたものが、克己さんの遺体です。これ以上、悪いものじゃないといいんですが】

「……」


ロープウェイは比較的最近のもののようで、窓が広く取られていて、動き出すと山の景色が間近に迫った。

「おお……これ、紅葉の時期にきたら綺麗だろうなぁ」

「それ後で羽田さんに言っといたら?少しは客が増えるかもしれねーって」

ロープウェイは、途中で二つの道に分かれていた。
三人が乗っているのは頂上行きだが、もう一つは谷の向こう側に繋がっている。
こちらの車体からも、遠ざかる谷が見える。

克己のいたところはもう過ぎ去ったが、目を離せない。
その時だった──

「アレだ!!」


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