空耳此方-ソラミミコナタ-
項垂れる透を放置して克己はすっかり温度の下がった砂浜を走る。
山の入り口から道を外れてきたが、さっきの砂浜とはどうも違うようだ。
反対側に出てきたということだろうか。

そんなことを思っているうちに周りの景色が変わってきた。
砂浜から岩場になり、上には崖が伸びている。
その崖ぞいに行くと、突然ポッカリと開いている口を見つけた。

薄暗く構えるそれは、日が沈む暗さも相まって、どうにも不気味に見える。
ゴクリとつばを飲み込み、そろりと近づいてみた。

よかった、何かが出てくることはなさそう

得たいのしれないことはないと知って思い切って中に入ると、ひんやりと涼しかった。

ここだ!

直感して克己はすぐさま踵を返した。
山登りの疲れがきていて、足はもう限界が近い。

急ごう。一番疲れてるのは僕じゃないんだから

走っていくと、存外速く二人の背中が見えた。
そこから声をかけようとして──克己の足は止まった。


玲子と透は予告通りちゃんと砂浜に座って待っていた。
玲子は透に寄り添うように身体を預け、海をみている。

声が掛けられなかった。
どうしてだろうか。
胸の奥がキュッと萎み、近づきたくない、そう思った。

寄り添う二人を見て、何もわからないほど克己も子供ではない。
だからこそ、痛かった。


克己は重い足をようやく動かして、ゆっくりと二人の後ろに歩いていった。


「よさそうな洞窟みつけたよ。涼しいから、丁度いいと思うよ」

「ありがとう」

「よく見つけたな」

「うん……すぐ近くだから」

そういいながら、顔を背ける。
二人は怪訝な顔で見合わせた。


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