空耳此方-ソラミミコナタ-
夜の散歩なんて、ろくなもんじゃなかった。
克己が洞窟へ戻ってきたのは、明け方に近かった。
憔悴した目で眺める。
しかし、二人は何事もなかったかのような出で立ちで眠っていた。
一晩中歩き回って克己が見つけてきたのは、小さな百円ライター。
これを火を点けてやろうか。
もちろん、片方に。
いいや。
克己は緩く首を振った。
そんなことしたとしても、燃えるのは僕らの関係だけだ。
僕は――透くんと友達で……いたい。
それは、いつ何時だって変わらないんだ。
克己はライターを足元に放り出し、横になる。
不思議と、歩き回る間には全く訪れなかった眠気が一気に押し寄せ、泥のように眠りについた。
「おい! 起きろ!!」
目覚ましは、透の掠れた声だった。
「…んぁ?……なに…」
「起きろって!」
「あだっ!」
頭をパコンと叩かれて、克己は跳ね起きた。
「痛いなぁ……」
「いっ! そこは触るなバカ」
「え?」
眠い目を擦りつつ、また叩かれないように頭上で手を振り回しただけだ。
その手が透の頬を掠めたらしい。
透は頬を押さえて文句を言った。