空耳此方-ソラミミコナタ-
「触るなって言っただろ?」
「…言われてないと思うけど」
「嘘!?」
「触った後で言ったね。それより、そこどうしたの?」
ああ…と言って手を退ける。
克己は息を呑んだ。
その手の下の頬骨から、大きな青タンの痣が現れた。
「大丈夫!?」
「平気だ平気」
「全く、傷だらけよね」
洞窟の入り口に凭れた玲子が冷たい視線を寄越す。
腕を組んで克己に大股で近づくと、ギュッと克己の耳をつまみ上げた。
「もう! どうしてすぐに帰って来なかったの! 心配したのよ!」
「痛い痛い! 玲子姉ちゃん痛い!」
ああ、やっぱり怒られた。
何故だか安心したその時、ポタッと水が克己の顔に落ちた。
「?」
怪訝に思って見上げると、玲子が泣いている。
「玲子姉ちゃん…?」
「バカ。……これだけ時間を掛けたからには…いいの見つけてきたんでしょうね?」
克己はあわてて見つけてきたライターと木の枝を持ち上げ、小さく笑って見せた。