空耳此方-ソラミミコナタ-
克己は今日も快晴の外に出て、ライターで木を燃やし始めた。
先が灰になったところで火を消し、石に擦り付ける。
すると、灰色の一本の線が姿を現した。
「ほら、こうしたら鉛筆みたいに字が書けるよ!」
灰の部分は少なくて、もろく崩れやすい木で書いた文字。
頼りないたたずまいに苦笑して二人を振り向く。
「ま、他に何もないしな」
「素直にいいねって言ってあげればいいじゃないの」
克己はフイとそっぽを向く透。こちらに向く痣が痛々しい。
玲子は肩を竦めてため息をついた。
「でもね、これだとすぐに木がなくなっちゃうから“タカラ”ってかけないかもしれないんだ」
「そうね……もっと木を探してくる?」
「いや、このあたりに燃えるような乾燥した木はなかなか見つけにくいと思うぞ」
「どうにか短く書けないかな?」
克己は縋るような目で二人を見上げた。
夕べでここまで自分で用意できたらよかったのだが、その前に体力の限界が来てしまった。
もう仕方ないと諦め、年上の知恵に頼ることにしたのだ。
しばらく考えた後、透が克己の横に屈んで、木の燃やしていない方の先で地面に案を書き出した。
「タカラの原型がほとんどなくなってもいいなら……これはどうだ?」
玲子と克己は両脇から覗きこみ、わぁ、と声を上げた。
「いいじゃない!」
「うん! これなら他の人が見ても何もわからない! いっそコレを名前にしようよ!」
二人の賞賛に照れくさくなって、透は立ち上がって頭をかく。
「名前っていうより、もう文字でしかないけどな…」
そこに書かれていた文字こそが、あの──『TKR』だった。