片戀
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お礼に、と、近くの自動販売機で飲み物を買う。お礼の分だけでなく私の分も。お時間がよろしければ一緒に飲みませんか、と、自動販売機がある場所に行く時に云われたからだ。
近くのベンチまで行って、その人は腰をおろした。
どうぞ、と紅茶の缶を差し出すと、結婚されてるんですね、と、その人は私が差し出した手にはめられた指輪を見て云った。えぇ、と、答えてからずっと姿は見ていないんですけどね、と、付け足した。周りの人はみんな、あのひとはもうこの世にはいないのよ、なんて云うんですけどちゃんと居るんですよ。私が寝ている時にはいつも傍に居てくれますし、と、言うと、そうなんですか、と、その人は笑った。
こういうリアクションをされたのは初めてだ。大抵みんな可哀相なものを見るような目で私を見て、適当に言葉を繕って立ち去るのに、目の前の人は話す前と変わらない態度で、そういえば自己紹介がまだでしたね、と云った。
お礼に、と、近くの自動販売機で飲み物を買う。お礼の分だけでなく私の分も。お時間がよろしければ一緒に飲みませんか、と、自動販売機がある場所に行く時に云われたからだ。
近くのベンチまで行って、その人は腰をおろした。
どうぞ、と紅茶の缶を差し出すと、結婚されてるんですね、と、その人は私が差し出した手にはめられた指輪を見て云った。えぇ、と、答えてからずっと姿は見ていないんですけどね、と、付け足した。周りの人はみんな、あのひとはもうこの世にはいないのよ、なんて云うんですけどちゃんと居るんですよ。私が寝ている時にはいつも傍に居てくれますし、と、言うと、そうなんですか、と、その人は笑った。
こういうリアクションをされたのは初めてだ。大抵みんな可哀相なものを見るような目で私を見て、適当に言葉を繕って立ち去るのに、目の前の人は話す前と変わらない態度で、そういえば自己紹介がまだでしたね、と云った。