本と私と魔法使い
今夜の図書館警備は千亜じゃないらしい。
私と和泉が図書館に着くと、知らない男子が立っていた。

「こんばんはー」

私が声をかけると、ゆっくりとした動作でこちらを向き、


「あぁ、委員長。こんばんは、…と」

「和泉咲音です」

「新しく入った子ねー、おれは羽津紀一。よろしくね」


さして興味無いのか、また違う方向を見た。さらさらとした黒髪に涼やかな双眸、…ぼんやりとしてなかったら、格好良いんだろうな。



「羽津、咲見ててもらってもいい?」

「いーよ、じゃ、今日はここにいればいい?」

「うん、よろしくね」


丁寧だけど、男子には極端な王子様スマイルじゃないんだ。
…まぁ、男が男に王子様スマイルって笑えるけど。

「じゃ、うろちょろすんなよ?咲」

ぼそりと耳に囁く和泉。

「ッ、囁くなっ!!」

私が耳を押さえながら怒ると、和泉はにやっと笑いながら、ひらひら手を振って歩いってしまった。


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