本と私と魔法使い
その言葉を合図に、ずん、と頭が重くなる。ぐるぐるねじ曲げられるような、痛み。

「…ッ…」


頭に流れ込む、声、記憶、感触…濁流みたいに区別できない。

キモチワルイ…

私は立ってられなくて床に膝をつけた。


「大丈夫か!?」

心配そうに私の顔をのぞきこむ、和泉。
やっぱり心配してくれるんだね。
なんとなく、嬉しくなった。

私は意識が遠のきそのまま…倒れた。



―…

「お前ッ…なんなんだよ!?…」


気を失った咲を俺は抱きかかえ多季をみた。のらりくらりとまるで感情が読めない。気味の悪ささえ感じてしまう。


「だぁいすきなんだねぇ…彼女のコト…。壊してしまいたくなるよ、君の綺麗な顔もぐちゃぐちゃに歪むくらい」

「何を…」



「…ん…、…ぅるさいわ」

腕の中の咲はゆっくりと目を開けた。
「なぁに…?」

「さ…」

咲、
そう呼び掛けて、口をつぐんだ。
違う。

「誰だ、お前?」

「やだ…、もうわかっちゃったの?…つまらないひとね」


俺の頬に手をあてて、ゆっくり引っ掻いた。ぴりりと痛みが走る。

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