本と私と魔法使い
サリサは完成された身体で生まれた、母も父もいないのだから、造られたという方が正しいのかもしれないけれど。

誰もが羨みそうな、細い、それでいて下品にならない、ほどよく肉のついた体つき。白に近い純粋な金髪、透明感のある水色の目。



不可解なことだけれど、出会った人達はそんなサリサを見ると、大概気味の悪そうな顔をして、逃げるように去ってしまう。


あの頃は、なにも知らずに、“リリィ”として過ごしていた。

アーベルは大体は優しく、望むことをさせてくれたけれど、外へは滅多に出してくれなかった。


サリサを外に出すことを恐れていた。
そんな風に感じた。
また、奥の、アーベルの自室にも近寄らせてはくれなかった。


その日はちょっとした好奇心からだった。

「リリィ様ー?」

「なに?多季」


へらへらとした考えの読めない男、多季。
サリサの髪を引っ張った。
痛いっての。


「なーぁになさろうとしてるんですか?」

「アーベルの部屋に入ろうとしただけよ」

「何でですか?」

ドアノブに手をかけたまま、気になったの、と答えた。単純にただ気になっただけ。
笑っていたのに、 多季は目を動かし、んー…、と唸って、ドアノブにかけていたサリサの手に自身の手を重ねた。


「僕は、リリィ様のしたいようにすればいいと思う…けど、」


後悔してもしらないけど。
ぽそり、とつぶやいて背中を向けて歩いて行ってしまった。

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