本と私と魔法使い
かけゆく

兆しとそして狭間で

学校に行って、一番びっくりしたのは、千亜の髪。

「短くなったね、…千亜」

教室に入って真っ先に私の前の席に座っていた千亜に話しかけた。千亜は恥ずかしそうに毛先をいじりながら言った。

「うん、すーすーするんだよねー…」
「心境の変化?」

「そんなとこ。ちゃんと前を見て、頑張っていこうと思ってね。」


髪切るだけだったのに不思議だね、すごい軽くなったみたいと笑った千亜は清々しくて安心した。笹木の事を聞くと、

「特に変わんないよー。…あ、でも喧嘩は増えたかなぁ?他愛ない感じの口喧嘩だけど」
「喧嘩、嫌いだったのにねぇ?」
「嫌いだった…ていうか、めんどくさかったんだと思う。…好きでも、簡単な事で嫌いになっちゃうから…そーいうのやだなぁとか」


千亜はひとつひとつ丁寧に言葉をひろっていく。きっとまとまらない部分も私に話してくれようとしているんだろう、つっかえながらも話すのを止めない。

きっと前だったら、そんな事してくれなかった。
さらさらと考えの一部を話すよりも、まとまりなくても全部話してくれようとする千亜に前より距離を感じなくなったのは、きっと笹木も一緒なんだろうな。


「…かわいーね、千亜はーっ!!」

ぎゅーっと目の前の千亜に抱きつくと、え?え?と戸惑う。
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