Tolie.




マンションを出て、
優斗さんの車に乗り込むと
”一輝には内緒だよ”って
小さく笑って、車が発進した。





「 よく言えば、一輝なりの
  リカちゃんへの償いなのかも
  しれないけど、アレは一輝が
  自分でやったものじゃないよ 」


「 ・・・・・え? 」








傷を見たあのとき、
絶句した私を見て
悲しそうに笑顔を浮かべた一輝は
それから龍一の話を始めて、
その傷については何も言わなかった。






「 アレは、リカちゃんを失った龍一が
  喧嘩好きの汚い連中のところに一人で
  殴りこみに行ったのを必死に止めた時に
  ついた傷でね 」


「 龍一が? 」


「 そう。正気を失って、っていうか、
  殺気を漂わせていたからね。
  ただの殴りこみなんかじゃ
  済まなかったかもしれない 」





それは、ただの八つ当たりなのかな。
その汚い連中に憂さ晴らしの相手を
してもらうにしても、なんでか
素直に飲み込めなくて、モヤモヤした。







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