短編集



唯と二人きりになってから少し歩くと急に肩を捕まれ叫ばれる。

「ななな、何で依紗那があの一條さんと桜葉さんと出かけることになんのよ!?」

そのまま私の肩を前後に大きく揺する。

ぶんぶんと聞こえるくらい大げさに。

「しらぁないよぉ。あとぉゆすらないでぇ~。」

私がなにかバカに見えているのではないだろうか?

「もぅ。一條さんに指名で副委員長になるし、遊園地に遊びいくし今度は桜葉さんも混ぜてどこか行くし私は練習でいけないし」

肩を揺するのをやめて大きな大きなため息をする。

体の中のすべてを出すようなため息。

「今回はしかたないよ。試合入ってるんだから。」

「はあぁ・・・鬱です」

「そんなにあの二人が好きなの?」

聞くとぽかーんと半口を開けた唯が何言ってんの?みたいな目で見てくる。

だがすぐ考え直したのか、

「確かに・・・言われてみると恋愛感情はないかも。ただ憧れているだけなのかもしれない」

などと真面目に返事をされてしまい今度はこちらがぽかーんとしてしまう。

真面目っていうか単純というか・・・。

「なんかよくよく考えるとそうでもないな。うん。試合ガンバロ」

単純だった。

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