短編集
×星歌×
今日最後の授業が終わり、勉強の苦痛から逃れられて、早々と家に帰ろうとしたときだった。
「あ、あの、星歌さんちょっといいかな?」
「はい、なんでしょうか?」
少し押さえて話す担任の伊藤先生は、申し訳なさそうの顔をして、申し訳なさそうに私を止め、申し訳なさそうに話話を続ける。
「えっと~茜下君のプリントが溜まってきてて、家まで持っていってほしいんだけど・・・」
「私がですか?」
「ごめんなさいごめんなさい!本当は私が行くべきなんだけど、今日重要な会議があって抜けれないのよ。その、星歌さをは家が近いって聞いたから」
「はぁ」
茜下君はほぼテストの日にしか来ない伝説の不登校男。いつも前髪を目の下までおろしていて、口数も少ない・・・らしい。実際私は話したことがないからわからないけど。
それ故に周りから距離をおかれていて陰も薄い。だからクラスの学級委員長である私ですらよくわからないのだ。
「わかりました。家は確か隣なので問題ないです」
「ホント!ありがと!とても助かるわー。じゃぁこれお願いね」