短編集
「旧名だ気にするな」
空『旧名?』
「ただ単に交通事故で両親を失い、妹と一緒に親戚の家をたらい回しにされて、今に至るからさ。名字が違うんだよな。本当の名字が黒桜(こくおう)だったからそこから」
空『わ、割と重そうな話をさらさらといいやがったよ』
晴流『なんかすまんかった』
二人はさっきまでのテンションがなくなり急に暗くなってしまう。今この話をしたのは間違いだったか。
と思っていたら何故か、委員長は肩においていた両手を前に滑らせ、ぎゅっと少しだけ力を入れて抱きしめてきた。
「ちょ・・・」
ふりほどこうとしたときに、ちらっと見えた委員長はさっきまでの笑顔が一欠片も残っておらず、言葉もふりほどこうとした力さえ失ってしまった。
なんというかその顔はどこか思い詰めているような、悲しくも寂しくも、真夜中の星の見えない空のようにどんよりとしているからだ。
そして微かに動いた口が発した言葉、実際には聞こえなかったが多分こうだ。
ーーーーー同じだ。
本当にそう言ったのかわからないが、俺にはそう見えた。
しかし、いつまでもこの体勢はまずいから声をかける。
「委員長?」