短編集


委員長は、俺のヘッドホンから漏れていたらしい空の声に気づき、ヘッドホンに耳をくっつけてくる。

俺はとっさに離れようとしたが、まるで磁石でくっついているかのように、ホーミングされて、離れられず、息がかかる至近距離で固まるしかなかった。

俺は他人の異性(家族を除いた)の奴とここまで近づいたことが無く、変に意識してしまうが、委員長は満更でもない様子。

実際、両肩に手をのせられ、背中に乗られているような体勢で、いろいろまずい。とにかくまずい。甘い匂いとか背中越しの感触とか・・・わかるだろ?マジでまずいって。男として。

「誰か私を呼びました?」

空『はいはーい。空といいます!よろしくー』

晴流『マスターの晴流です。黒星と仲が良いんですね』

「コクジョウ?」

耳からヘッドホンは外れなかったが、多分頭を傾げているのだろう。少し力がかかっていると感じたからだ。

とっとと離れてほしいから早口で答えた。

「黒星は俺だ。縁起の良い名前ではないがな」

「へぇー。私もこれからそう呼ぼーっと」

晴流『ははっ。学校ではあまり呼ばない方が良いと思うよ』

空『なんで負けを意味する黒星にしたんだかな』
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