憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

パチンと、頭の中でシャボン玉が弾けた。

よし、帰ろう。
そんなに気まずいのなら、あたしがここを出て行けばいいじゃないか。どうしてそんな簡単なことに、すぐ気づけなかったのだろう。

「あたし、もう行く」

尚がこちらを見上げる。

「課題、やらなきゃいけないから図書館に行く」

「課題?」

「そう、あんたのせいで田丸に出されたの」

「なにそれ。人の所為にしないでくれる」

ス、と田丸に借りた洋書をとってパラパラと捲る尚。しばらくそれを眺めていたと思えば、すぐに閉じてあたしへと押し返した。きっと分からなかったんだろうな。そう思って内心ほくそ笑む。

「あのハゲも結構いい本持ってるんだ」

「え?(…ていうか今、ハゲって言った?)」

「それ、その本」

「なによ、読んだことあるの?」

珈琲を口にしながら、小さく頷く。

「一年の時、アメリカに行っていたから。その時、暇だったから図書館で読んだやつだ」

「!!!」

「真知には難しいかもしれないけどね。あんた馬鹿そうだし」

そう言って意地悪そうに微笑んだ。
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