大人的恋愛事情
思わず振り払った手が意外に簡単に離れたので、なんとなく振り返ると立ち上がった状態で、ドアに横向きのまま寄りかかる男が深い溜息を吐く。
え?
その姿はとても辛そうに見えて。
「なに?」
不信に思う私がそう聞くと、横向きから背中をドアにつけて、ズルズルとその場にまたしゃがみ込んだ。
「頭痛てえ……」
低く掠れた声は、そういうことだったのかと思いながら、さすがに見捨てるようなことも出来ずに、しゃがみ込む圭の額に手を当てると、驚くほど熱く熱を持っていた。
顔を上げる気力もないのか俯いたままの圭に、溜息を吐きながら聞く。
「ずっとここに?」
「ん?」