大人的恋愛事情
 
「自分でやってよ」



「そばは?」



「買ってきた、食べる?」



「ああ」



「ちゃんと測ってよ?」



そう言ってソファを立ち上がると、突然熱い手で腕を掴まれた。



体温計すら握ろうとしなかったくせに……。



「なに?」



私の腕を掴んだ男は、テレビに視線を向けたまま。



何を言うでもなくこちらを見るでもない男は、暫く黙ったままで。



だた熱い手が私の腕を掴んでいるだけ。



そんな何でもない仕草や何でもない瞬間に、忘れていたはずの圭との慣れ親しんだ時間が一瞬にして蘇る。
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