大人的恋愛事情
「で、どこかに?」
藤井祥悟が今度は私に視線を向けて聞いてくるので、軽く肩を竦める。
「詩織の家で食事するんです。ですのでここで失礼します」
話しを切り上げるように言うと、また苦笑いで困ったように声を出す。
「随分冷たいな……。もしかして嫌われてる?」
片手をコートのポケットに入れ、横から覗き込むような仕草で歩きながら言って来る男は簡単にはめげないらしく、小さく溜息を吐いた。
「別に嫌ってませんよ。てか、嫌うほど藤井さんのこと知りませんしね」
「食事って何を?」
聞いておきながら私の返事を無視して、私の隣を歩く詩織に視線を向ける。