大人的恋愛事情
 
「鍋です。野菜が山ほどあって、コラーゲン鍋でもしようかと思ってるんですよ」



「コラーゲン鍋?」



「知りません? 肌にいいんですよ」



「ふーん、そうなんだ。美味しいの?」



「美味しいですよ、もしよかったら、藤井さんも一緒に……」



驚くことを言い出す詩織に、思わず足を止めて視線を向けると微かに笑っていて。



「人数多い方が鍋って美味しくない?」



「そんなの気のせいよ、人数で味が変わるわけないじゃない」



少し面白そうな詩織をにらみながら言うと、同じく足を止めた藤井祥悟が笑う。



「確かに……。気がするだけだな」



穏やかにそんな言葉を呟いて、足を一歩踏み出す。
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