大人的恋愛事情
「聞こえてます? 知らない……」
『総務まで行って場所教えようか?』
総務まで来る?
そんな事されたら……。
『変な噂が立つだろうけど』
微かに笑って少し面白そうに呟く電話口の藤井祥悟に、もう一度聞こえるように溜息を吐いた。
てかなんなのよっ!
断れない状況に追い詰めてくる男に、苛立ちながら素直に従うのも腹立たしいので簡潔に伝える。
「裏から出て右、三本目の筋を入ったところの、寿司割烹にしてもらえます?」
どうせ行くなら少しでも高いところをと思いそんなことを言う。