大人的恋愛事情
 
「寝たのかよ……」



思わず呟くと、動くわけでもなく目を開けるわけでもない繭が声だけを出す。



「寝てない……」



いかにも眠そうな声に、可愛いと思える単純な俺は、ベッドに腰かけその顔を見つめる。



綺麗な顔にかかる髪を払うと、ピクリと動く瞼。



「服脱いで寝た方がよくないか?」



まだ起きているはずの繭にそう言うと、同じく目を閉じたまま微かに笑う。



「脱がして」



「俺が?」



「うん」



一瞬躊躇っていると、目を閉じたまま手を動かし自分で服を脱ぎ出す。



「ここで脱ぐなよ」



動揺する俺が思わずそう言うと、閉じていた目がゆっくりと開いた。



ベッドの横に腰かけ見下ろす俺を、少し冷めたその瞳が捉えると言いようのない欲望が湧き上がる。
< 559 / 630 >

この作品をシェア

pagetop