crocus

誠吾はなんとか苦しんでいる心を助けてあげたくて、一緒に楽しくせんべいを食べたかった。

もしかして……と、考えが頭を過ると、躊躇いも何もなく、りゅうくんの頭を撫でた。

すると半透明だけれど艶のある茶色の毛色をした猫が、慰めるようにりゅうくんの足首に擦り寄っている姿が視えた。

「大丈夫だよ。りゅうくん。今ね、茶色の猫さんが、りゅうくんの足にいるよ。きっと、泣かないでって言ってる」

「え?いないよ。モモは、土の中だよ……?どうして茶色って、知ってるの?」

「……だって、みえるんだもん」

そう言うと、りゅうくんだけじゃなくて、周りの友達も、先生ですら青ざめた表情で、誠吾に怯えた視線を向けた。

その時に、誠吾は『見えることは、怖くて悪いこと』なのだと思った。

誰かのために何かしたいと思っても、この力ではヒーローになれないんだと知った。

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