crocus


そのことを思い返しながら誠吾は、真っ向からぶつかっていく恭平を見ていた。一体、哲平くんと鮫島さんの間で何があったのだろう。

誠吾だけでなく、皆目検討もつかない面々は、今まで見た事のない恭平の憎しみに満ちた様子に戸惑っていた。

「…わかんねぇよ、恭平!何でお前がそんなにキレてんだよ?」

琢磨がみんなの意見を代表して尋ねた。その言葉を受けて恭平は、こちらを振り向きかけたけれど、すぐにまた鮫島さんを威嚇した。

そして鮫島さんから目を離すことなく、説明してくれた。

「こいつが…哲平を脅迫してたんだ。…俺を…中学校の時のサッカーの決勝試合に出させないようにすれば、ここで働いていた父親には何もしないって…」

「は?」

理解した琢磨は、理不尽な話の苛立ちをそのまま言葉で表した。もちろん他のみんなも一気に表情に陰りを見せ、眉をしかめた。

どうしてこうも偉ぶる人間は、脅しの手口が稚拙で、頭の悪さを露呈したがるんだろう。

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