crocus
色違いの5つの点
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突然、橘さんの大きな胸の中に後ろから抱きしめられ驚いた。背中は橘さんの鼓動のノックを感じとっている。身動きしようにも、優しいけれど強い腕の力で包まれていて1ミリとして離れることを許してはくれない。
目の前にいる橘さんの先生と視線が合うと、先生は安堵したように目を細めた。
「そう…あなたが……恵介君の大事な子なのね?」
「そうだよ、可愛いでしょ?」
「た、橘さん!?」
一体どうしてしまったというのだろう。
いつもの橘さんだったら、こんな冗談は決して言わないはず。
そこまで考えると、若葉は橘さんの行動の意味を悟った。
そうか、橘さんはこう言うことで先生を安心させようとしているんだ!じゃあ、私も話に乗らなきゃ!
橘さんと先生の2人が会話に集中できるようにと、若葉は抵抗をすることを止めて大人しくした。