crocus


「恵介くん…?」

切なく眉間に皺を寄せる先生は、恵介を不思議そうな表情で見つめていた。

「もういいですよ、先生。…苦しかったんでしょ?先生も。見てたら分かります。許しますよ?…もう僕にはこの子がいるから、大丈夫です」

そう言って恵介は腕を伸ばして、優しく若葉を抱き寄せた。突然のことに若葉は抵抗も見せずに、目を丸くするばかりだ。

そして琢磨自身は、その光景に思わず手を伸ばしかけた。
行き場のない手は、拳を作って元の位置に返すしかない。

確かにここで再会したときから、あの恵介が若葉を呼び捨てにし、ひたすら執着心を覗かせていることがおかしいとは思っていた。

そして、今も若葉を見つめるその目は…恋しているように見えて…。

でも女性嫌いを克服出来たらしい恵介のことを、何故か素直に喜べない自分がいる。

まさか…俺は…。

探り当てた自分の気持ちを心の中で改めて唱えてみれば、琢磨は一気に青ざめた。

俺は…男が好きだったのかぁぁぁ!!!

オーナーになっちまったぁぁぁ!!!






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