crocus

「あっははははは!!!」

ずっと暗い外を窓から見ていた鮫島さんは、クルッと椅子を回転させると、天井を仰ぎながら高笑いした。

その異様さに全員が息を呑み、身構えた。

「琢磨くんだったかな?健太が野蛮な少年と付き合ってると思っていたが、少しは賢いようだね。察しの通りだよ。僕が、君の家の魚屋を空き地にすることは簡単だと言ったんだよ」

両肘を机に付けて、顎を手の甲で支えながら、ついに真実を語りだした鮫島さん。

「僕は秘書という立場が好きでね。どうしても傾きかけのここの社長に気に入られたかった。だから、頭の悪い淳史くんの面倒を見ることにしたんだ。大きなかぶと虫が欲しいだの、サッカーで優勝したいだの…わがままっぷりには手を焼いたなぁ」

目を閉じ、その光景を思い出しているのか、呆れたようにわざとらしく首を振った。

「でも、今は僕の言うことを聞くしか脳のない木偶の坊だ。要くんも、ここに入る直前に見ただろう?」

もしかしたら鮫島さんと一緒に車に乗っていた男の人のことを言っているのかもしれない。

「そうか…、誰かに似ていると思えば、彼が大島グループの社長の息子さんだったんですね。社長のことはよく新聞やテレビで見て知っていたが…」

納得した桐谷さんは、改めて鮫島さんを見据えると語気を強くして主張した。

「健太さんの勇気によって、全てが明るみに出た今、鮫島さんから何か言いたいことはありますか?」

動きを止めたかと思えば、鮫島さんは鋭い眼光に変えた。大勢の反感を目の前にしてもなお、その目には強い意志が宿ったままだ。

何をこの人をここまで駆り立てているんだろう。何を1人で背負っているんだろう。

「言いたいこと?何故、あの時の面々がこんなにも都合良く集まっているのか、ということだけだよ」

あくまでも悪びれた態度は、一切見せない鮫島さんを見ていて、すごく悲しく、憐れに、そして孤独に思えた。

鮫島さんに纏う黒々とした深い闇に、一瞬魅入られていると、背後から懐かしく、ひどく安心する声が聞こえた。

「それは…私がこの子達を集めたからよ」

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