アイ・ドール

「もう、わかるよね――娘さんもスマホや洋服にバイト代消えて、カネ足りなくなって店長さんと同世代のオヤジ達と援交してカネ稼いでるんだよ。いつも帰りが夜遅いでしょ――バイトで遅くなってんじゃないんだよ。そして、悪い友達とツルんでクラブに出入りして下らない男達と――まぁ、これ以上は言えないね。息子も同じだよ――アリスや葵ッチの写真集やエロ動画サイト見ながら、ヤラシー妄想を皆が寝静まった頃に爆発させちゃってるよ、きっとね――」

「――――」


「ったく、何が助け合って生きてるだよっ、そんなの嘘なんだよ――幻想だよ、幻想。息子が中学卒業したら恐らく奥さん離婚を切り出すね、確実に。マズイよね、養育費は取られるし、ひょっとしたら慰謝料も――マンションのローンは払い続けなきゃならないし、あぁ、切ない結末だよね。家族がそれぞれ違う方向を見てるんだもん――悲しき家族の崩壊。悲劇だよね――」


「くっ――ううぅ――」



 角度を深め、俯く川井出――アリスが語った事が概ね合致しているのだろう。事実、反論しない。アリスの強力な言葉の吸引力で圧縮され、川井出の姿が小さくなっている様に私には見えた。

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