アイ・ドール
「あ、あのう、チーフという事は、何人かのマネージャーさん達を統括するという事でしょうか――」
「いいえ、彼女達のマネージメントは舞さん一人でやってもらうのよ」
「私が、一人でですか」
ずっと持っていたカップを落としそうになった。
たった一人で――とても無理――断わろう。そう言おうと口を開きかけた時――
「大丈夫よ――」と社長が強く言い、テーブルの隅にあった一冊の分厚いファイルを手に取り、私の前に置いた。
「この会社とメンバーの資料よ。すぐに全部覚えなくてもいいからとりあえず目を通してみて――」
「は、はぁ」と、気の抜けた返事をした――しまった、断わるタイミングを逸してしまった。
私が戸惑い、たじろぐ事など社長にはわかっていたのだろう――不安を取り除く一手がこの資料なのか――。
断わるのは、次のタイミングに賭けよう――私はカップを置き、資料に目を通した。
資料には、会社の事業概要、ビルのフロア解説、ヴィーラヴメンバーの個人データなどが記載されている――そして、彼女達のスケジュール管理の項目で、資料をめくる手と目が止まる――。
「えっ――」