マイティガード
アネリ・ウォーロックはいわゆる社長令嬢だ。
彼女の父ルロイ・ウォーロックが経営する会社は、社会的には大変な貢献と業績を成している。
しかし忙しさのあまり子供と触れ合う機会なんて一ヶ月に10分がいいところ。
妻はアネリが幼い頃に亡くなってしまい、今やアネリを構うのは金で雇われた“旦那様に仕える”使用人達。
つまりアネリはおまけ扱いだ。
「ねえバネッサ。」
「はい、お嬢様。」
だから時々、アネリはこんな皮肉を口にする。
「せっかくの“パパの世話をしなくていい日”なんだから、仕事を忘れてのんびりなさいよ。
今のあたしに媚び売ってもお給料は上がらないわよ。」
馬鹿にしたような口調のアネリに、メイドのバネッサは手を止める。
アネリが言ったことは図星のようだ。
バネッサはバスタブに濡れないようにタオルを掛けると、さっさと浴室を後にしてしまった。
去り際、
「ええ、お嬢様はもう13歳。
旦那様の人形を卒業なさっていい頃ですものね。」
そんな皮肉をぶつけてきた。