マイティガード
バネッサがとったのは敵対的な態度。
しかしアネリは癇癪を起こすそぶりも見せず、むしろ予想通りすぎてつまらないといいたげに、
「ふん。」
と一言。
バタン、とドアが閉まるのを確認してから、もう一度窓の外を見る。
背の高い木々と湖が一枚の絵のように切り抜かれている。早朝6時の靄(もや)を纏った森は、慌ただしく嫌な日常なんて無いものと思わせてくれる。
実家の屋敷を出てこの別荘で暮らしてしまおうか…。
ここ最近ずっと、そんなことを考えてしまう。
―――丁度いいじゃない。屋敷の使用人達は皆あたしのことを嫌ってるし…、あたしもあんな家にいたら息が詰まっちゃうもの。
表向きは従順な使用人達も、裏ではアネリのことを何と呼んでいるか知っている。
“思い上がりのお荷物”。
“旦那様の人形”。
到底、敬う気持ちなんて皆無だ。