マイティガード


バネッサがとったのは敵対的な態度。

しかしアネリは癇癪を起こすそぶりも見せず、むしろ予想通りすぎてつまらないといいたげに、


「ふん。」


と一言。



バタン、とドアが閉まるのを確認してから、もう一度窓の外を見る。


背の高い木々と湖が一枚の絵のように切り抜かれている。早朝6時の靄(もや)を纏った森は、慌ただしく嫌な日常なんて無いものと思わせてくれる。

実家の屋敷を出てこの別荘で暮らしてしまおうか…。
ここ最近ずっと、そんなことを考えてしまう。


―――丁度いいじゃない。屋敷の使用人達は皆あたしのことを嫌ってるし…、あたしもあんな家にいたら息が詰まっちゃうもの。


表向きは従順な使用人達も、裏ではアネリのことを何と呼んでいるか知っている。

“思い上がりのお荷物”。
“旦那様の人形”。

到底、敬う気持ちなんて皆無だ。


< 4 / 352 >

この作品をシェア

pagetop