マイティガード
「…ふん、別にいいけど。
下手に皆から“おべっか”使われるの頭にくるし。」
蚊の鳴くような声で呟き、水面に広がる髪に口元を埋める。
ふと、アネリの両耳を誰かの指が撫でた。
「っ!」
同時に、聞き慣れた低い声が降ってくる。
「またアネリお嬢様はお強がりを。
その“皆”に、私を含んでいらっしゃらないのでしょう?」
嬉しさを堪えているような優しい男の声。
アネリは耳がじんわり熱くなるのを感じながら、ゆっくり後ろを振り返る。
「…ええ、そうね。あなたは違うわね、パーシバル。」
照れ隠しに仏頂面をするアネリの目先には、
“彼女の”唯一の使用人。灰色の髪のパーシバルという青年が立っていた。