好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕
「…もういいか?」

襖を一枚挟んだ向こうで和希の声がする。

思ったよりもすぐそばで声がして、私はどきっとした。

たった一枚の薄い壁で、彼の横で、服を脱ぐ。

恥ずかしさで指が震えて、制服のボタンが外せない。


「終わったか?」

「ひゃっ、だっ、ダメ!」

慌てて変な声が出てしまった。

「待ってっから、ゆっくり着替えろ」

そんなこと言われても……



< 202 / 263 >

この作品をシェア

pagetop