あの子の好きな子



部活動での居心地の悪さは、数か月で消えた。ほとぼりが冷めたのもあるし、結局あの彼氏の方が他にも悪い噂を色々と立てて、非難が彼に集中したから。ようやく私は平穏で幸せな活動を送れるようになっていたのに、またひそひそ話の対象になってしまったのか。今度のは心が傷付く類の噂じゃないからまだましだけど、会長の心境が気になる。

「か・・・、会長と話して来る」
「おっ、さっそく。ひゅうひゅう!」
「ひゅうひゅうじゃない!」

もし私が会長のことを特別な意味で好きだったら。今のこの状況は、ドキドキとワクワクと恥ずかしさと。そんな感情に心躍らせていたんだろうか。もうずっと前から続いている、会長への申し訳ないような気まずいようなこの微妙な感情が、もの凄い勢いで広まる噂のせいで増幅されている。

会長は、どこだろう。4階、3階、2階と下がりながら会長を探しまわった。もう少しで昼休みが終わってしまう。その証拠に職員室のあたりがざわざわと騒がしい。先生たちが移動しているんだ。横目で見ながら通り過ぎようとしたとき、その中に私と同じ色の上履きを発見した。

「会長」
「・・・あっ」

何やら職員室で用事を済ませていたらしい会長がいた。私の顔を見ると、結構な小走りでこっちへ向かってくる。私が話し始めるより先に、会長がかぶせるように声を出した。

「会ちょ・・・」
「ごめん!久保、ごめん。本当にごめん」

会長は顔の前で手を合わせて、凄い勢いで謝ってきた。私は混乱状態のまま、とにかくいいからと言って会長を落ち着かせた。


< 133 / 197 >

この作品をシェア

pagetop