あの子の好きな子



「久保さんは?」
「あいつはテニス部だけど・・・なんでお前の話っていつも遥香が出てくんの?」
「別になんとなく・・・もう1回話してみたいなあ」

前に会ったときは、こっちがパニクってて、まともに会話できなかったから。不安がなくなった今、広瀬くんの幼馴染のあの子と色んな話をしてみたい。

「・・・ねえ広瀬くん、今から写真部入らない?」
「は?やだよ」
「途中から入った人もいるしさ、平気だと思うんだけど」
「絶対やだよ」

だめか。
広瀬くんが大のつく鈍感男だとわかってから、私はある程度大胆な発言をするようになっていた。広瀬くんと二人で消えたあの1限から、私達の関係を疑う声も増えたけど、もうそれも慣れっこでどうでもよくなった。広瀬くんとの仲は特に進展しないし、噂の一人歩きで空しいところもあるけど、私は毎日楽しいからそれでいい。

「広瀬くん家近いし、暇そうなのに・・・」
「失礼なこと言うな」
「・・・広瀬くんって、放課後何してるの?」
「バイト」
「えっ、ほんと?知らなかった!なんのバイト!?」

フレッシュでビックな広瀬くん情報が入った。アルバイトしてるなんて考えてもみなかった。でも帰宅部なら十分にありえる話だ。

「週に3回くらいだけど。コンビニ」
「うそっ。広瀬くん、いらっしゃいませって言うの!?」
「なんか文句あるか」
「想像できないよ!ねえどこのコンビニ?このへんだよね?」
「・・・お前みたいな学校の奴らが来ないように、遠めのところにしたんだよ。教えないよ特にお前には」

そのあと何度か聞いたけど、広瀬くんはコンビニの場所を教えてくれなかった。本気で私には教えてくれない気らしい。もしかして本当の本当に嫌われてしまったのかと思って泣きそうになった。


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