あの子の好きな子



「照れくさいだけですよ、大丈夫ですよー」

金曜日。お決まりの写真部の日。
私は後輩の加奈ちゃんに広瀬くんのことを話していた。

「私のお兄ちゃんも、彼女にバイト先隠してたんですよ。来られると恥ずかしいからって」
「彼女にも?でも絶対行きたいよね」
「ですよね、接客業だったら、絶対見に行っちゃいますよね」

1年生の土屋加奈ちゃんはとってもかわいい後輩で、小さくて頑張り屋で女の子らしい。是非妹にしたいと前から思っていた。

「でも初めてあゆみ先輩の恋バナが聞けて、嬉しいです」
「え?あ、うん・・・学年違うと逆に言えることあるよね、あはは」
「そっか、先輩たちには内緒にしますね」

加奈ちゃんは人差し指を口にあててそう言った。仕草がいちいちかわいい。ちくしょう見習おう。
私は高校2年生になって、今の今まで誰かと付き合うだとかそういった経験が一切ない。付き合うどころか誰かのことを好きになったりということがあまり記憶になくて、中学時代に好きになった先輩の下の名前ももう思い出せない。だから女友達同士で恋の話に花を咲かせる経験もあまりなくて、私もこういう話がやっとできるようになって嬉しい。

「ねえ、加奈ちゃんは?そういうのないの?彼氏いないよね?」
「え?あー・・・私は・・・うーん、内緒です」
「えっなんで?言いにくい?」
「ごめんなさい、嘘です!ないですよ、私は」

とてもないような反応には見えなかったけど、そう言われてしまったら仕方がない。私は加奈ちゃんが大好きでそういう話もしたかったからしたけど、加奈ちゃんには内緒にされてしまって少し寂しかった。まあでも仕方ない。






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