あの子の好きな子



「広瀬くんの友達のスズキくんがいたとしてね。そのスズキくんは、どうやら友達のヨシコちゃんのことが好きらしくてね。でも、そのヨシコちゃんに、広瀬くんが好きですって言われちゃうの。全部、ヨシコちゃんの言ってることで、本当かどうかはわからないんだけど」

我ながらきちんと説明できたので、一人で満足して広瀬くんの顔を見た。だけど私の満足とは裏腹に、広瀬くんは不可解そうな顔をしていた。完全に話がわかっていない。

「・・・スズキとヨシコがどうしたって?」
「あの・・・だからズスキくんは広瀬くんが好きで・・・あれ違う、えっとヨシコが・・・あれ?」
「もうわけわかんねーよ。お前の話なの?普通に話してよ」
「わ、わかった、例え変える」
「いや例え話じゃなくて・・・」
「例え変えるってば!」
「・・・別にいいけど」

後輩の男の子に興味があると言われて困った話なんて広瀬くんにできなかった。興味があるってどういう意味だと思う?なんて死んでも広瀬くんに聞けない。

「あの、た、例えば・・・広瀬くんが・・・く、久保さんのこと好きだとして・・・」

でも、代わりに言った例え話が、あまりにもシャレにならなかった。言ってしまったあとでまずいと思った。広瀬くんの顔が見れないまま、机だけを見つめて私は話した。


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